小堀の日本語教 師への道 !
2005・2006


筆者プロフィール
文教大学 日本語日本文学科卒業後、中国 陝西省 西安外国 語学院大学へ日本語教師として赴任していました。
現在、紳士服店から一転、都立高校に赴任し活躍中!
ちなみに、現役時代のポジションはテール・ バック兼リターナー 

第55話 ピクニック(2)
 岩山を前に呆然と立ち尽くす俺。帰りたい…でも帰れない… 。一応、入り口らしきものがある。学生たちに手を引かれ、そ こから山の中へ入った。「山の中へ入った」と言っても、日本 の山とは違い、木があまり生えていない。地面が「土」ではな く「岩」であるために、「なだらかな斜面」ではなく、「ゴツ ゴツした急斜面」になっている。
 のぼり始めて30分、けっこうな高さまで登った。「滑り落ち たら死ぬ。」ぐらいの高さまで登り、学生に聞いてみた。

 俺:「ここから落ちて死んじゃった人、いるかな?」
学生:「さぁ、わかりません。誰も数えたことがないですから (笑)」

 落ちて死んでること前提じゃねーかよ…。

 まぁ、あと30分も登れば頂上だろう、と思い歩き続けること30 分。頂上らしきところに着いた。

学生:「先生!見てください。」
 俺:「あぁ〜、キレイな景色だね!」
学生:「違います。アレです、アレ。」

 見ると、さらに高くそびえ立つ岩山が…。

学生:「さぁ、あの頂上まで行きますよ!!」

 もうね、笑うしかなかったです…。そして、なぜこの「ピク ニック」を断らなかったのか…痛烈に後悔しました…。



第54話 ピクニック(1)
 ある日曜日の朝…。

学生:「先生!ピクニック行きましょ!ピクニック!!」

 朝一で電話がきました。「ピクニック」という言葉に、背筋 が凍りつきました。  一般的に(日本で言うところの)ピクニックって、きれいな 野原にお弁当(オニギリでもよいが、サンドウィッチならなお 良い) 持ってって、ゴロンって寝転がりながら大空にはばたく鳥を眺 め、目の前を通り過ぎる蝶を目で追いつつ全身にマイナスイオ ンを浴びてリラックスする行為を指すじゃないですか。一般的 に。
   赴任一年目のときも誘われて行ったんです。「中国式ピクニ ック」に。もちろん「中国式」は「日本式」と違うわけですよ 。
 まず、学生自らマイクロバスをチャーターします。ある程度 人数が集まれば、簡単にチャーターできるみたいです。で、約 2時間かけて山のほうへ向かいます。はじめの一時間はちゃん とした道路走ってます。一時間過ぎたあたりから、道路に麦が 敷かれ始めます。農家の人たちが、道路を走る車を利用して脱 穀するんですね。さらに30分走ると、いきなりオフロードに なります。そこを砂ぼこりを舞い上げながら走ります。マイク ロバスが…。そのまま走ること30分…。

学生:「先生!着きました!」

  バスを降りると、高くそびえ立つ岩山が…。…え!?まさか、 ロッククライミング!?

  学生:「先生、食べ物です。」

渡されたものは、サンドウィッチ…などではもちろんなく、ソ ーセージとチョコレートとパン、それからミネラルウォーター …。なにこれ!?非常食??

学生:「さあ!先生!!元気を出して登りましょう!!」

ふざけんなよ!こんなストイックなピクニックねーよ!!   (つづく)


第53話 宴(3)
 どれぐらい寝ていたのでしょう。まぁ、ほんの数十分でしょ うが…。強烈なジャスミン茶の香りで目が覚めました。目の前 には、ギッシリとジャスミン茶の茶葉を押し込めたコップに、 お湯を注いだモノが置かれてました。いうなれば 「超ジャスミン茶」ちなみに見た目は、昔水槽でザリガニ飼っ てたんだけど、なんかザリガニが死んじゃって「あぁーどうし ようか。」なんて言ってるうちに、水槽の内側にコケみたいな のが生えてきちゃって、「なんか掃除するのも怖いよね。」っ て家族全員が水槽の存在を見て見ぬ振りをし続けて一年ぐらい 経っちゃったような、なんともミステリアスな色合いをしてい るモノでした。

学生:「先生、お酒に酔ったときにはこれが一番です!」

中国の民間療法は、大胆且つ斬新なものが多いんです。以前風 邪をひいたときに、温めたコーラにすりおろした生姜を入れて 飲む「ホットジンジャーコーク」(←俺が名付けた)がいい、 と言われて無理矢理飲まされたことがあります。それより効く かなと思い、「超ジャスミン茶」飲みました。マジで一気に酔 いが覚めました。頭と胃にズシンとくる感覚。恐るべし「超ジ ャスミン茶」
で、宴も終わりに近づき、デザートの西瓜が運ばれてきました 。自分、実は西瓜大好きなんです。ニヤニヤしながら塩かけて 食べようとしている俺のことを、数人の学生が凝視。

学生:「先生、大丈夫ですか?まだ酔ってるんですか?」
俺:「え!?なんで?もうすっかり覚めたよ。」
学生:「でも、それ…塩ですよ。」

でました!文化の違い!!西瓜に塩かけるって、日本独自の食 文化だったんですね。

俺:「うまいから、ちょっとやってみなよ。」
学生:「(一口食べて)…日本人の味覚は、ちょっとおかしい です。」
俺:「コーラあっためて生姜入れて飲む民族に言われたくねー よ!」

そんなこんなで、楽しい宴は過ぎていったのでした。


第52話 宴(2)
 帰国して2年が経ちました。現在、高校教師してます。もう 転職はしない予定です。多分…。
 さて、前回の続き。3番食堂で「宴」があるとのこと。半分 楽しみで、半分は不安で胸をいっぱいにしながら食堂へむかい ました。

学生一同:「いらっしゃいませ〜。」(←あえてつっこまなか った。)
部屋の中に入ってびっくり。なんと女生徒しかいません。
学生:「男子は暑いので、呼びませんでした(笑)」
ひどい…まぁ、確かに暑苦しいけどさ…。 で、席に着いたんです。でっかい円卓に。女の子ばっか20人弱 、男俺一人。その居心地の悪さといったら…。とりあえず食べ よう、とガンガン料理を食べました。
学生:「お酒も飲んでください。」
自慢じゃないけど、自分はお酒飲めません。コップ一杯のビー ルで寝てしまうような男です。しかし、せっかくの「宴」断っ たら気分を悪くするだろうと思い、ビールをゆっくり3杯ほど 飲みました。  しばらくすると、まわりの音がどんどん遠くに離れていき、 目の前が暗くなっていきました…。(つづく)


第51話 宴(1)
日本に帰ってきてから約半年…ちょっとサボりすぎちゃいま した。お久しぶりです。なんかどんどんコラムが増えてきてま すね。自分も頑張れねば…。
 軽く近況から話しますと、帰国して一ヶ月ちょっとで就職が きまり、今は某アパレル関係の営業をしております。松浦亜弥 と一緒に…。スーツ欲しい人は言ってください。
 さて、学生に帰国する旨を伝えてから2週間、以前よりも学 生との距離がぐっと縮まりました。いままでなかなか話しかけ て来なかったような内気な子が友達連れて俺んち来たり、みん なで料理作って食ったり、学生の色恋沙汰に首突っ込んだり… 。「教師」「学生」、「日本人」「中国人」、ということを意 識しなければ、俺も彼らもごく一般的な20代前半の若者なわけ で、教室から一歩外に出ればすこぶるフランクな関係になるわ けです。それを否定する先生方も多くいらっしゃいますが、「 オン」と「オフ」の境をきっちり分けて、それを学生に伝えて いくのもまた教師の役目だと思います。
 この2週間、いままで比較的おざなりにしがちだった「オフ 」を充実させようと思っていたのですが、それは学生も一緒だ ったようです。金曜日の夜、電話がきました。
学生:「先生、明日の夜、私たちは宴(うたげ)を準備しまし た。」
俺:「(宴って…また古い辞書読んで直訳しやがったな…)何 時ごろですか?」
学生:「夜の7時です。先生、大丈夫ですか?」
俺:「明日の夜は大丈夫ですよ。」
学生:「じゃあ、3番食堂で待ってます。」
俺:「はい、わかりました。じゃあ、楽しみにしてるね。」
 西安外国語学院には1番、2番、3番食堂と言うのがありまし て、1番食堂が肉マンやラーメン、中国風ハンバーガー といったファーストフード系のもの、2番食堂が普通の定食類 、で3番食堂というのは西安に多く住んでいるイスラム系 の学生が利用する食堂なんです。イスラム系の学生は、絶対豚 肉を食わないんですね。食べないどころか豚肉が一度でも のった皿も使わないし、厳しい人だと「豚」と言う言葉を発す る事さえダメなんだそうです。このクラスのみんなで食事でき るところ、ってことで3番食堂を選んだそうです。

 で、当日その食堂に行って見たらなんと…。続きはまた、次 回…。